ここ最近の発達心理学・教育心理学の分野の研究では、一般に広く認識されている以上に、子育てにおける父親の役割が大きく重要であるという研究結果が報告されています。毎日の生活を円滑に回して子どもの日々の健康を維持し成長を促す実際場面では、ママが圧倒的に中心的な役割を果たす中、父親は、子どもの社会性を育み社会との繋がりを形成していく過程で大変重要な役割を果たしていくということです。パパは、「家庭を支えるために仕事をしてお金を稼ぐ」という役割よりも、「子どもの社会性を育み社会との繋がりを作り、成長した子どもを社会に送り出していく」役割が自身のミッションと自覚すれば、子育てに積極的に関わっていく糸口がつかめるのではないでしょうか。「社会について子どもに考えさせる」「社会の中での自分について意識させる」「子どもに社会的な体験をさせる機会を設ける」「子どもに世界について教える」「子どもに将来のビジョンを持たせる」という俯瞰的大局的な視座に立った活動に子どもと一緒に取り組んでいくことを意識してアイデアを出してみると良いのではないでしょうか。
科学館や博物館のファミリー向けのイベントやアクティビティを利用したり、キャンプや旅行をパパが企画して実行したり、地元のスポーツクラブや自治会・子供会の活動に加わったり、いろいろなプランが考えられます。パパの得意分野の図鑑や事典などを子どもと一緒に読んで、その分野の面白い話興味深い話をパパが思いつくままに話したり、パパ自身が情熱を持って取り組んでいる仕事や趣味について語ったりすることも、とても大切だと思います。パパの「子育て」が、「ママのお手伝いをする」という受け身で消極的なものに止まってしまうと父親の子育てにおける重要な役割を果たしていないということになりますので、以下にご紹介する二つの研究結果を踏まえて、ぜひ積極的かつ能動的に子育てにおけるパパ領域を広げていって下さい。平日は、ママと子どもをセンターにしてサポート役に徹し、週末は、パパがリーダーシップを取ってパパ中心に家族みんなで楽しく遊ぶというのが、理想型でしょうか。週末ママがくつろいだ気持ちでゆったり眺める、パパが子ども達と楽しく一緒に遊んでご機嫌に笑っている光景は、何よりママをそして子ども達をハッピーにするはずです。
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最初にご紹介する論文は、少し前のものですが、「共働きの家族では、父親の働きかけ言葉掛けが、母親のそれよりも、2〜3歳児の言葉の発達により大きな影響力を持つ」という内容の研究結果を報告した北カルフォルニア大学の発達心理学研究所の論文です。多様な分野について子ども達に話をする父親がいる家庭の2〜3歳児の子どもの言語能力の発達が、そうでない場合に比べて非常に良好であったとのことです。母親の語りかけの多寡よりも、父親が知性と教養のある話者として加わることが、幼児期の言語発達に大きな影響力を持ったということです。母親だけでなく多様な大人が多様な事象について、子どもに重層的に語りかけることがとても重要ということかもしれません。丁寧で質の高い保育ケアが、そうではないケアより幼児の言語発達に影響を与えることも同時に分かったとのことですが、この効果は両親からの手厚い語りかけを上回ることはなかったということです。親密な関係にある大人が、一人の個人として子どもと対峙しての、一対一の濃密なコミュニケーションが大切ということなのかもしれません。
共働きの家族では、父親の働きかけ言葉掛けが、母親のそれよりも、2-3歳児の言葉の発達により大きな影響力を持つ
Fathers Influence Child Language Development More Than Mothers
- Date:
- November 1, 2006
- Source:
- University of North Carolina at Chapel Hill
- Summary:
- In families with two working parents, fathers had greater impact than mothers on their children’s language development between ages 2 and 3, according to a study by the University of North Carolina at Chapel Hill’s Frank Porter Graham Child Development Institute and UNC’s School of Education.
Story Source: Materials provided by University of North Carolina at Chapel Hill. Note: Content may be edited for style and length.
次に紹介するのは、2019年のジョージア大学の研究です。平日大人も子どももお互いに仕事や保育園・学校などのタスクが優先される場面では、一緒に遊ぶ存在ではなく子どもの日常を手助けする父親が、子どもとより良い強い絆を持つことができるとのことです。週末など大人も子どもも時間にあまり縛られずゆったりと過ごせる場面では、たっぷり子どもと一緒に遊ぶ父親が子どもとの間に強く良い関係を築いていくことができることも分かったそうです。80組の3歳児とその父親を対象とした調査研究で、父親へのインタビューと家庭での父子の関わりをビデオ撮影したものを分析して結論を得ています。家族の関係性には、平日日常をつつがなく運営していくという側面と、休日の遊びを中心とした体験共有の側面の二つに分かれることを理解して、子どもとの関係性を構築していくことが大切と結論づけています。
父親と子ども達は、より強い絆を持つためにどのように関わるべきか?
How fathers, children should spend time together
Study dives into factors that could help develop a stronger relationship
Date: June 11, 2019
Source: University of Georgia
Summary:
Fathers who spend lots of time helping out with child care-related tasks on workdays are developing the best relationships with their children.
Story Source:
Materials provided by University of Georgia. Note: Content may be edited for style and length.
Journal Reference:
- Geoffrey L. Brown, Sarah C. Mangelsdorf, Aya Shigeto, Maria S. Wong. Associations between father involvement and father–child attachment security: Variations based on timing and type of involvement.. Journal of Family Psychology, 2018; 32 (8): 1015 DOI: 10.1037/fam0000472